『Pasti ada jalan keluar』
スタートを切った53名は一塊のままゴールスプリントとなる。
最終コーナーを曲がってからゴールまでは約200m、コーナー、若しくはその更に手前でのポジショニングが、全ての鍵を握るといっても過言では無い。
Photo by @to_uproad
THOPA SYAIBANIはラスト1周に入るホームストレートから、一気に集団前方にジャンプアップを行い、最終コーナーでは4〜5番手の位置に付けた。
サポート陣が見守る中、驚きの走りを見せたTHOPA。
しかし前の選手が転倒、外側を走っていたTHOPAは煽りをくらい危うくコースアウト寸前。
完全に失速した彼のスピードは再加速虚しく、後続の選手達に飲み込まれながらのゴールとなった。
26位。
見えた勝利のライン。
その感触が濃い程に彼を悔しさが襲い、感情のやり場に困り果てた様子。
彼は声に出し、体を揺らし、表情を歪めた。
チームピットに戻って来た彼の様子に、周りも掛ける言葉が見つからず見守る事しか出来ない。
人目を憚らず感情をその場で吐き出した彼は、周りに「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝える。
異国の地で日本人以上に礼節を重んじる姿は、こちらが耳の垢を煎じて飲まされている気分にもなる。
レースは蓋を開けてみないと分からない事が多く、ゴールスプリントとなると更に水物。
たらればを挙げればキリが無い。
毎戦確実に成長がその走りに見られ、後はチャンスを逃さない事。
自分のレースが終わると、チームメイトの走りを応援するんだとカメラを片手に歩いていく。
さっきまでの泣き顔は嘘のよう。
これが彼の周りに人が集まる理由かもしれない。
自分を大切に出来て、本気で挑戦出来て、相手を思いやれる。
これほどチームにとって財産な事はない。
最後、THOPAは監督やサポート陣と次のレーススケジュールの事を話していた。
『Pasti ada jalan keluar』
道は必ず開ける。